ヒューゴの不思議な発明

ドラマ

Hugo Cabret (Asa Butterfield) is a 12-year-old orphan whose life changes after he encounters Georges Melies (Ben Kingsley) in his magical toy store in a Paris train station.

[ネタバレあり!]

映画黎明期、その魔術的感性により一世を風靡した映画作家ジョルジュ・メリエス。
19世紀末から20世紀初頭にかけての約20年間で500本以上の作品を撮影し、世界初の職業映画監督と呼ばれるメリエスは、多重露光・スローモーション・ストップモーション等、今日の映像表現でも用いられる多くの技術を開発していったことで知られている。
映画の創始者であるリュミエール兄弟を始め、黎明期の映画が基本的に「写真が動く」というプリミティブな驚き自体を売りにしていたのに対し、マジシャン出身であったメリエスは映画製作に「奇術的トリック」を導入することで、映像表現を全く新しい幻惑のメディアへと昇華させた。

そこにあったはずのものは魔法のように消失し、人間は空を飛び、大砲の弾は月面に突き刺さる。特撮の創始者とも呼ばれるメリエスの描く幻惑的なビジョンは当時の観客を驚嘆・熱狂させ、彼の名声は否が応にも高まっていった。起きながらにして「夢」を見るように、今だ誰も成し得ない幻想世界を具現化したい、というメリエスの理想はそのまま今日におけるあらゆるエンターテイメントの根底に根ざしていると言えるだろう。

しかしながら時代の変遷と共にメリエスの描く「夢」は、大戦の足音が近づく現実の重苦しい空気に飲み込まれ次第に輝きを失っていく。ファンタジーからリアリズムへ。夢は現実に取って代わられ、夢を生み出し続けた男は時代の闇へと葬られた。

それから数十年。メリエスの業績が世間からすっかり忘れ去られた1930年代のパリ。

モンパルナス駅構内の時計台に隠れ住み、小さな部品を集めては誠実な時計職人であった亡き父親の果たせなかった古い自動人形の修復に没頭する孤児・ヒューゴは、たまたま部品をくすねようとした玩具店の老主人に見込まれオモチャの修理を手伝うようになるが、長く付き合っていくうちにこの老人が結構不可思議な人物であること、そして父親の遺した自動人形の隠された真実を知っていることに気が付き、老人の養女であるイザベルとともに謎の解明に挑んでいく。

とまあ、メリエス好きな人間にはどうにもこうにもたまらん展開なわけですが、DVDのジャケがどこから見てもSFファンタジーというか「ハリポタ」を意識したかのようなイメージの写真なんで、まさかこんな作品だとは夢にも思わなかったですよ。いやまあ「落ちぶれたメリエスの再生の物語」というフレコミじゃ到底売れないのだろうけど。

昔マジシャンが使用していたという英国産の機械仕掛けの自動人形に失われたハート型の鍵。亡き父親が生前ヒューゴに語った白昼夢のような映画の話。イザベルの口から語られる老人の不思議な行動。機械人形の描く絵のように、散らばった点と点が次第に結びついて「老人=メリエス」という真実を浮かび上がらせる前半の演出は素晴らしい。

映像的には(パリが舞台ながら)ジャン・ジュネ的な小粋さ・オサレ感はないものの非常に美しく、全体的に少し硬質でひんやりした透明感みたいなものがあってかなり好みな感じ。特に秀逸だったのがモンパルナス駅構内の裏側に縦横に広がる広大な空間の描き方で、ベッソンの「サブウェイ」あたりもそうだったけど、この「目に見える空間」の下層にダンジョン的空間が広がっているというビジュアルイメージは非常にゾクゾクします。 私事ながら、親がデパートの店員だったため小さいころはよく閉店後の職場に遊びに行き(今だと問題なのだろうけど)、店舗の裏側に広がる社員用空間とかダクトの絡み合った搬入路とかに潜り込んだ時に感じた「地下迷宮感覚」に近いのかもしれない、とか思ったり。

ヒューゴ役のエイサ・バターフィールドが美少年過ぎてクロエ・モレッツのファニーフェイスっぷりが強調されてしまうのが玉にキズではあるものの、常にヒューゴを危機的状況に追いやる公安官(サシャ・バロン・コーエン)を始め、各々の登場人物の性格描写や設定がきちっとなされており物語に深みが出ている点は非常に好感が持てました。とりわけ老人役のベン・キングスレーはそもそもメリエスに似てるというのもあるけれど、諦念と絶望に取り憑かれて日々を生きる老人の心境を好演しており、名優の面目躍如といったところ。

不遇な人生を過ごしてきた機械修理の得意な少年が「壊れた機械」であるメリエスを修理し、リアリズムが蔓延する世界に「夢」を取り戻す(と同時に自らの人生をも素晴らしいものに作り変える)という「”夢”の復権」こそが今作のテーマであり、フィルムにこだわってきたスコセッシが初めて3Dを導入した、というのも単純に「見たことのない(現実では不可能な)映像を体験させる」という視覚効果的な目的のみならず、人々が根底で抱き続ける「夢」もまた目に見える形で具現化可能なのだというスコセッシ流のメッセージなのかもしれない、などと思ったりするのは深読みし過ぎなんでしょうかね。

ともあれ映画の魔力に胸をトキメかせたことのある全ての人にオススメしたい一本です。

ヒューゴの不思議な発明 / Hugo
公開:2011年
制作:イギリス・アメリカ
監督:マーティン・スコセッシ
出演: ベン・キングズレー / エイサ・バターフィールド / クロエ・グレース・モレッツ / サシャ・バロン・コーエン / ジュード・ロウ 他
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