寫眞館

アニメ

明治・大正・昭和という激動の時代を舞台に、写真館の主人と一人の女性とのほのかな交流を繊細な語り口で描いた良作。

物語は時間の流れを大幅にカットした「断片」の繋ぎとして描かれており、登場人物の背景といった説明的な要素はもとより、セリフも効果音もない非常に淡々とした作品ではあるものの、柔らかなピアノの旋律と共に描かれる個々のシークエンスは、むしろ断片的であるが故に、一人の人間の生涯を写したアルバムを紐解いていくかのようにどこまでも饒舌にドラマを描き出していく。

時は明治。伴侶と共に写真館を訪れる新婚と思われる若い娘。やがて子を成した彼女は幼い娘を伴って家族で写真館を訪れるようになるが小さな娘はむっつり仏頂面をしたまま頑なに笑わない。 彼女が写真館を訪れるたび何とか笑わせようとあの手この手で四苦八苦する主人。和やかな雰囲気。いつまでも続くかのように思われる平和な日々。

しかし大戦に関東大震災と、日常は次第にキナ臭さを増していく。笑顔が失われていく時代。それでも写真館の主人は写真を通して人々の「笑顔」を切り出し続ける。

育っていく娘。老いていく母。出征先で戦死する父。見守るかのように、随所随所で娘の写真を取り続ける写真館の主人。 写真という「現実の断片」を通して描かれる娘の成長と幸福、そして絶望。

いつしか時代は流れ、写真館の主人は老いて病床に臥している。彼を見舞う、今では老婆となった「笑わない少女」は朽ちかけた写真館の中で主人が撮影し続けてきた膨大な写真を見出す。

皆が笑顔で写っている大量の写真。子供を笑顔にするために集められた玩具の数々。
写真というメディアは現実を写しとるだけではなく、後世に「何を残すか」を選択できる装置なのだと写真館の主人は知っているのだろう。 長い人生の中で深い悲しみや絶望があったにせよ、写真という「一点」で切り取られた笑顔の記憶はその写真が存在する限り残り続ける。

写真の山の中に、若くして戦死した息子の写真を発見し、自分より先に逝った懐かしい人々の遺影も皆笑顔だったことを思い出す老婆。 そんな彼女に対し、2人で写真を撮ることを提案する主人。様々な人々の人生を優しい視線で見守り続け、永続する「楽しい瞬間」として切り出し続けた主人の、己の人生の証のような最後の写真。 静かに「終わり」が近づいている予感の中、並んでカメラの前に座る2人の描写は一切言葉のない作品であるが故に、際立って味わい深い。

「笑わない少女」だった老婆がラストシーンで初めて見せる澄み切った笑顔。 それは哀しみと諦念、それでも生きてきたという自負などを全て受け入れ達観したかのような清々しさに満ちており、こんな笑顔を映画で、しかもアニメーションで描けるのかと心底驚嘆させられた。

見終わって、この作品がたった2o分にも満たない短編であることに改めて驚愕。

寫眞館
公開:2013年
制作:日本
監督:なかむらたかし
美術監督: 木村真二
寫眞館 [ (アニメーション) ]

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