千年女優

アニメ

虚構と現実とが交錯していくストーリー展開・キャラクター造形の巧みさといった構造的な部分、大正から昭和にかけての細部まで丁寧に作り込んだ描写の美しさや往年の古き良き映画ポスターデザインのパクり方の上手さといった技術的な部分に加え、「女学生はやっぱし袴で自転車だよなー」という趣味的な部分まで引っ括めてとにかく自分の琴線に触れまくる要素がてんこ盛りであり、今敏という作家を改めて認識する契機となった思い入れの深い作品。正直、初監督作「PERFECT BLUE」があんまり好きじゃなかったため、それまで今敏という監督に対する自分の中の評価はイマイチだったのだけど、この作品で一気に株が上昇したのをよく覚えています。

ただ、あえて文句を言うならば、確かに今作は非常に良くできた「映画」ではあるかもしれないけれど、それ以上に見ているこちらの「現実」を浸食し、一瞬なりとも自分の立っている足場をグラつかせるほどの破壊力はない、かなーと、ちょっとだけ思ってみたり。「PERFECT BLUE」にしろ「東京ゴッドファザーズ」にしろ「妄想代理人」にしろフラッシュバックを多用して時間軸を交錯させたり虚実入り乱れた展開で観客を煙に巻いたり、様々な手法で既存の物語展開から脱却を謀ろうとする意志は見受けられるのだけれど、どうにも結局すべてを「物語」として着地させてしまうんですよね、この監督は。すんなり受け入れられる「お話」にしてしまう。

「PERFECT~」が嫌いだった理由は、せっかくアニメという自由自在なメディアを用いておきながら、なんで実写でもできそうな(しかも実写であってもさほど面白くなさそうな)お話を作っちゃうかなー、という憤りだったのだけど、この「千年女優」はアニメというメディアならではの手法を巧みに使用していて非常にクォリティの高い作品だったと思うし、自分としてもかなり「好き」な部類に入る作品なんだけど、如何せん良くできた「お話」としてまとまってしまっているため、「ちょっとイイ話」の領域を出ていないのも確か。作家の顔が見えてこないんだな。作品の中から。

まあ、エンターテイメントなんだからそれでええやん!とか、お前の感情移入能力が乏しいだけじゃい!とか「作家の顔とか見えちゃうのはプロとして逆に恥ですから」とか言われてしまえばそれまでなのかもしれないけれど、せっかく時間を割いて作品を鑑賞するのだから、自分としてはやはりそういった強度のある作品をどうしても望んでしまうんだよね。まあ実際日本のアニメ界というフィールドでそういった「作家の自己発露」みたいなモノに対する需要が果たしてあるのか、ということを考えると、それが「産業」である以上は難しい注文なのかもしれないけれど。

もっともこの作品を通して今監督への評価と期待が自分の中で非常に高まったのも確かなんで、訃報を知ったときは本当にショックでした。これからもこの人の作品を見続けたかったんだけどなあ。

ちなみに初めて平沢師匠を「イイな」と認識したのもこの作品からなのでした。


千年女優 Millenium Actress
公開:2002年
制作:日本
監督:今敏
出演: 折笠富美子
荘司美代子
飯塚昭三
山寺宏一 他




千年女優 [ 今敏 ]

千年女優 [ 今敏 ]
価格:4,676円(税込、送料込)

画像をクリックすると楽天の商品にジャンプします

コメント

タイトルとURLをコピーしました