ツィゴイネルワイゼン

ドラマ

内田百間「サラサーテの盤」を原作とした、清順監督による「大正浪漫三部作」の第一作であり、自分にとって永遠に「ヤバい邦画ベスト1」であり続ける作品。何というか「邦画」だの「洋画」だのという枠組みを超越して、こんな「映画」を撮れた人間はこれまでいなかったし、恐らく今後も存在し得ないのではなかろうか。

誰しも一度は夢の中で「夢を見ている自分」を自覚して「あーヤバい、この夢延々と見続けてたら絶対ヤバい」みたいな感覚を経験した事があるとは思うのだけれど、例えるとしたらあの感じかもしれない。漠然とした不安感。ひたすら羅列される全く取り留めのないイメージ。頭では明瞭に「コレが夢である」事を自覚していながら、なおかつ自分の中で何故か妙な統一感を見出してしまっているという不可思議な感覚。

結局ストーリーらしいストーリーも存在しないのだけれど、その散漫な印象がまた「悪夢的」で妙に薄気味が悪い。明確な「恐怖」を描いている映画ではないものの、自分でも意識しないうちに「あちら側」に片足を突っ込んでしまっているというかいつのまにか「現実の認識を反転させられてしまっている」みたいな、イヤな感じ。

通常の映画が、2時間なら2時間という「枠」の中でのみ現れる束の間の「夢」だとするならば、この作品は精神の奥の方にスルスルと入り込んできて自分の内側にある記憶と融合してしまい、脳にこびり付いて離れない「永続する悪夢」だと言えるかもしれない。しかもそれは精神の深部に対して揺さぶりをかける甘美な美しさを孕んでおり、抵抗しつつも繰り返し繰り返しそれを求めてしまう類の幻惑的で麻薬のような常習性を持ったタチの悪い悪夢である。


Zigeunerweisen
公開:1980年
制作:日本
監督:鈴木清順
出演: 藤田敏八
原田芳雄
大谷直子
大楠道代 他


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