すっかり巨匠然として、イマイチな映画ばかりを大量生産するようになってしまったリュック・ベッソン監督が、まだ野心的な青二才の映画バカだった1984年に制作したアンダーグラウンド・クライム・アクション作品。正直、ベッソン監督作の中で一番好きですね。というか、これ以降の作品って、あんまし面白いと思わないんだけど。
To Be Is To Do (ソクラテス)
To Do Is To Be (サルトル)
Do Be Do Be Do (シナトラ)
という冒頭のすっとぼけた字幕をスタートの合図に、映画は物凄い勢いで回転を始め、観客をアンダーグラウンドへと連れ去ってゆく。あああ!この演出カッコ良すぎるっ!若手特有のヘンな熱っぽさや、フランス映画特有のベタベタした湿り気はさほど全面に出さずあくまでクールで軽く、疾走感に溢れているのが見ていて非常に心地いい。
クリストファー・ランバート演ずる主人公の「飄々としていて調子が良くてシニカルであっけらかんと犯罪を犯しつつ言葉巧みに他人を煙に巻く」という、ハリウッドの映画ではあまりお目にかかれない(何となく「勝手にしやがれ」あたりのジャン=ポール・ベルモンドを彷彿とさせる)キャラ造形も「フランスならでは」という感じでステキ。 その他脇を固めるのが、ジャン・レノを始めイザベル・アジャーニやらジャン=ユーグ・アングラードやらリシャール・ボーランジェ(超好き!)やら、今振り返ってみると何だか「超大作」みたいなキャスティングだったりするのもちょっと面白いですね。
若き日のベッソンの内にあったハリウッド志向と、長年地元で培われたフランス映画的なテイストが絶妙なマッチングを見せた、まさに奇跡みたいな瞬間。後年の作品のアレさ加減を見るにつけ、大した天分に恵まれていない作家であってもこういった奇跡みたいなタイミングが重なってついうっかり良いモノを作っちゃったりする事って往々にしてあるよなーと、しみじみ実感。アメリカなんぞ行かなきゃ良かったのにね。
Subway | |
公開: | 1985年 |
制作: | フランス |
監督: | リュック・ベッソン |
出演: | クリストファー・ランバート イザベル・アジャーニ リシャール・ボーランジェ ジャン=ユーグ・アングラード ジャン・レノ 他 |
![]() サブウェイ -デジタル・レストア・バージョンー [ イザベル・アジャーニ ] |
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