恋愛睡眠のすすめ

コメディ

公開前のウェブ情報やら前評判やら何やらでは「ポップで可愛くて最高にハッピーになれる映画」みたいな印象だったし、愛しのシャルロット・ゲンズブールが出演しているし、というわけで、まあフツーの娯楽作として軽い気持ちで観たわけなんですが

…………………………………………………………………………ヤラれた。

まさか「ケーキだと思って囓ったら中身が全部ワサビ」みたいな作品だったとは。

誤解のない様に言っておくと、映画自体は個人的にかなり好きな部類の作品だったし最近見た中でも「傑作」と呼べるだけのクォリティを持っているとは思うのですよ。思うのだけど、如何せん現在の自分の精神状態というか心境的に、ちょいとばかりヘヴィー過ぎだったかな、と。まー、結局これを「単なるエンタメ」と笑って受け流すだけの精神的な余裕が(当時の)自分の側に無かったんですね。

確かに妄想と現実の区別がつかなくなっていく演出も(アリガチながら)秀逸だし、俳優の演技も良かったし「笑い」の要素もたっぷりだし、手作り感満点な映像も非常に実験的かつ可愛らしくて、パッと見はいかにも「アメリ」とかその辺が好きな女の子に受けそうな感じなんだけど、その実描かれているのは ” 自意識とプライドばかりが肥大してコミュニケーション不全に陥った自称アーティストの青年が、受け入れ難い現実を直視できず次第に幻想に逃避していく ” みたいな、何というかもうドロんドロんな内容だったりするわけで、見ててやたらと共感する反面、自分の最も嫌悪している部分を突きつけられたような感覚に陥ってしまって見てて痛々しいやらムズ痒いやら。何というか自分の内側にある最も「押しちゃダメなスイッチ」を16連射されちゃった感じ。沈む沈むブクブクブクブク。

要するに「可愛くラッピングされた爆弾」というやつが一番タチが悪いということですね。1人で見て本当に良かった。

所謂「エンターテイメント」という存在が現実から遊離した「幻想」を売るメディアだとするならば、この作品はまさにその対極に位置するもので、「夢」をテーマにしつつも徹底して冷酷で救いが無くて何一つとして思い通りに行く事のないリアルな「現実」を観客に突きつける姿勢は、いわばフィクションというお約束から逸脱して「現実」の我々に直接斬りつけてくる、非常ーに物騒なテロ行為と言っても過言ではないわな、とか思ったり。

夢の世界では何だってできるし、どんな事でも思い通り。だから、ひたすらツラくて面倒くさくてつまらない現実なんかもう要らない。この「物語」にはもう飽き飽きだ。御都合主義な夢の中で永遠にゆるゆる楽しく暮らしてたい。

なーんて、いまだにそんな思いに捕らわれてしまう自分の内面の脆さを映像に映してまじまじ見せつけられる感じで、ウンザリしてみたり絶望してみたり開き直ってみたり。てか本当にミシェル・ゴンドリーってばイジワルな奴だなー!

もっともそのゴンドリー自身がこういった非エンタメな作品を作ってしまうのだから、結局のところ彼自身も同族嫌悪的な意識があっての確信犯的姿勢なのかもしれないけど。


La Science des rêves
公開:2006年
制作:フランス・イタリア
監督:ミシェル・ゴンドリー
出演: ガエル・ガルシア・ベルナル
シャルロット・ゲンズブール
ミュウ=ミュウ
アラン・シャバ 他


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